戻る
奈良新聞HP;http://www.nara-shimbun.com/flash/p_hn3797.html
奈良新聞 2000年5月25日

亀形石の隣に湧水施設

湧水施設 

height=355 src=
亀形石造物などの導水施設の水源に
設けられた石組みの湧水施設

(明日香村岡で)

コの字形に砂岩組む

明日香村・酒船石遺跡



 飛鳥時代の女帝・斉明天皇(594〜661年)が造営したとされる明日香村岡の酒船石遺跡の石敷き遺構で、亀形石造物などの導水施設のすぐ南側にある水源地の上に石組みの湧水(ゆうすい)施設が新たに見つかり、調査した明日香村教委が24日、発表した。同村教委は「亀形石造物をはじめとする一連の導水施設の水の流れが解明された。自然の水源を確保した遺構は類例がない」と評価しており、なぞに包まれている同遺構の性質を考える上で貴重な資料となりそうだ。

 水源地の上に設けられた湧水施設は、亀形石造物に隣接して置かれている小判形石造物の南側付近で見つかった。レンガを積むように石で組まれた貯水池とその中央部に設けられた石積みの取水塔。石はすべて黄色を帯びた天理砂岩の切り石で計200〜300個を使用していると見られている。
 貯水池は、小判形石造物の方へ開くようにしてコの字形(東西1.8メートル、南北2.4メートル以上)に設けられており、深さは1.3メートル。底部にも砂岩が敷かれており、現状では、底部のすき間から自然水が湧き出している。
 コの字形の囲いの中央部に設けられた取水塔は、高さ1.3メートル。石を筒状に積み上げて中が空洞になるように築かれている。砂岩は凸形に加工して組み合わせ、11段積み上げられており、上部には長さ45センチ、幅30センチ、厚さ15センチの蓋(ふた)石が2つ置かれていた。
 11段目の北側の石には中央部を凹形に掘り込んだ取水口があり、底から湧き上がってくる水が高さ約4センチ、幅約20センチのすき間から流れ出るように斜めに加工されていた。
 現状では、取水塔の空洞部に砂が堆(たい)積しているため、水は流れ出ない状態になっているが、当時は、貯水池の底石は粘土などで固められ地下の湧き水が取水塔に集まるようにしていたと考えられている。
 この取水口と小判形石造物の水槽との距離は2.5メートルで、20センチの落差があった。同村教委は「この取水口から小判形石造物まで木樋などを使って水を流していたのではないか」と話している。



戻る