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2007年1月20日
私部南遺跡(その2)現地説明会  
私部南遺跡発掘調査   (財)大阪府文化財センター

 2007年1月20日(土)、私部南遺跡(その2)の現地説明会が行われた。
大阪府文化財センターでは、交野市域から寝屋川市域にかけて<緑立つ道>・第二京阪道路予定地内の埋蔵文化財発掘調査を実施しており、私部南遺跡の説明、出土品の展示が行われ数百人を超す熱心な考古ファンで埋まった。   

日時:平成19年1月20日(日)  午前11時から午後3時まで
場所:私部南遺跡 私部南1丁目
      JR学研都市線 河内磐船駅から北へ徒歩 約15分
      京阪電車交野線 交野市駅南東へ徒歩10分

問合せ先  (財)大阪府文化財センター  交野分室 072-895-1200      
私都南遺跡とその周辺の遺跡
2007.1.18 朝日新聞朝刊記事参照

弥生と古墳時代同じ場所に集落
交野・私都南遺跡で発見
 交野市の私部南遺跡(私部南1丁目)から、弥生時代の前期末から中期初頭の集落跡と、古墳時代後期(6世紀ごろ)の集落跡が見つかった。府文化財センターが17日、発表した。
弥生時代の集落がいったん消えてから、数百年後に同じ土地に再び人が移り住み、古墳時代の集落ができたと見られるという。
 第2京阪道路の建設に伴い、同センターが昨年9月から、道路予定地と重なる同遺跡の一部(約1600平方び)の発掘調査を進めてきた。
 その結果、弥生時代の集落跡からは、大型円形住居(直径約8m)の跡とみられる溝が確認された。弧を描く溝のいくつかが重なっており、少なくとも3回は建て替えられたと見られる。円形住居の大きさから、この地域の中心的な集落だった可能性があるという。
 古墳時代の集落跡からは、多数の柱穴や溝が見つかった。一辺が5m前後の方形竪穴住居跡が、少なくとも8棟分あり、一部の溝からは大量の土器も見つかった。

弥生時代のムラ
 今回の調査で検出された弥生時代の集落跡は、ムラが廃絶した後、徐々に土砂が流失したため、またその後に営まれた古墳時代のムラと重なっているため、断片的にその痕跡を留めるにすぎません。
 しかしながら調査区の中央付近では直径8mほどの弧を描く紬い清の痕跡が幾重にも詰められ、大型の円形住居が数次にわたって建て替えられたことがうかがわれます。こうした大型円形住居は弥生時代中期を中心に、各地域の拠点的集落に営まれていたとみられ、本遺跡の性格を考える上で重要なものと言えます。
 他にもやや弧を描くように痕跡を留める清かいくつか認められ、複数の円形住居が営まれていた可能性があります。弥生時代前期の土器を割って敷き詰めるように納めた土坑も検出されており、そうした住居跡との関連が想定されます。
 調査区東端へ落ち込むように検出された谷状地形では、流れ込むように集中した弥生土器の溜りも見つかっており、断片的な遺構ながら台地上に大規模な集落が営まれていたことが想定されます。
 今後の調査で弥生時代のムラの様子が更に解明されることが期待されます。
古墳時代のムラ
 弥生時代のムラが廃絶してから数百年を経て、6世紀後半を中心に再び人々が移り住み、古墳時代のムラが営まれたことが明らかになりました。
 古墳時代のムラには、上部を浅く広く窪めさらにV字形に深く掘られた部分をもつ東西方向、南北方向の溝が開削されています。これらの溝は2条1組を基本とするようですが、何時期かにわたって埋められては開削し直され、別の溝に切り替えられており、常に2条1組で同時に機能したとは限らないようです。溝の上層から横たえた2個体の須恵器甕などの土器が出土しました。この溝が使われなくなって埋めてしまう時、その上層を中心に多量の土器を埋め
込んでいることもあったようです。
 溝で区切られた空間には8棟以上の方形の竪穴住居と無数の住穴、土坑などが検出されています。柱穴には大小円形のものに加え隅丸方形を呈するものもあり、多数の掘立柱建物や柵列などが何度も建て替えを繰り返しながら集落が営まれていたものと考えられます。竪穴住居などの建物と溝には前後関係を示すものもあり、今後の調査進捗とともに古墳時代のムラの変遷が明らかになることが期待されます。
上層で見つかった中世の遺構
  弥生時代や古墳時代の遺構面の上は、10〜20cmの厚さの黒褐色の遺物包含層でほぼ全体が覆われていました。この黒褐色の遺物包含層の上面では、中世の遺物とともに畑として耕作を行った際の南北方向の畝溝がほぼ全面で検出されました。弥生〜古墳時代には谷状地形だった調査区東端の区域はその後も湿潤な土地で、この一角だけは水田として利用されていたようです。水田耕作面では往時の人々が耕した際に残した足跡が見つかってい ます。出土遺物からこれらの耕作面は室町時代(14世紀頃)のものと考えられます。

今後の調査の予定
 私部南遺跡(その2)では、平成20年1月までの予定で順次調査を進めていきます。調査は、大阪府教育委員会の指導の下、道路建設工事により埋蔵文化財に影響が及ぶ恐れのある範囲について、数次に分けて実施する予定です。
 これからの調査により私部南遺跡の変遷がさらに解明されることが期待されます。
今後とも、ご理解とご協力を賜りますようよろしくお願いいたします。

現地説明会風景
出土土器類