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広報 かたの 特集シリーズ

広報かたの 平成21年9月1日号
発掘!発見!緑立つ道

今月のテーマ 列品解説(3)「上私部遺跡の出土遺物(その2) 」

(財)大阪府文化財センター 三好孝一
問い合わせ (財)大阪府文化財センター京阪調査事務所 (TEL895・1200 〒576−0022 交野市藤が尾1−2)
 
 今月も、歴史資料展示室で開催されている、第二京阪道路関連遺跡出土遺物展示会(前期)で展示されている上私部遺跡から出土した遺物を紹介します。
 
上私部遺跡の遺物

上私部遺跡からはアクセサリーとして作られた管玉以外に、紡錘車や滑石製模造品という小さな石製品もみつかりました。

 

 

紡錘車
 下の写真で三角錐の先端部分をカットしたような形をした2点の製品は紡錘車と呼ばれるものです。
 その用途はこの石製品の真ん中にあけられた穴の部分に棒を差し、その棒に綿や絹などの繊維を引っかけながらコマのように回して撚りをかけ、糸に仕上げるために回転力を強める重りとしてでした。
 これらの表面をよく観察してみると、細かい線が放射状に刻まれているのがみえます。これは連続した三角形を組み合わせたその表現が、のこぎりの刃を思い起こされることから鋸歯文とよばれ、弥生時代から古墳時代にかけて銅鐸や埴輪などさまざまな製品の飾りによく用いられました。

 

 

 

 


滑石製模造品
 続いて右下の写真の楕円形とひし形の石は、滑石製模造品と呼ばれる石製品です。 
 それぞれ有孔円板と剣形石製品と呼ばれ、前者は鏡、後者は剣を模倣して形作られたものと考えられます。
 両者は7月号広報で紹介した臼玉と併せて、「古事記」や「日本書紀」に記される「鏡・玉・剣」の三種の神器の代用品として、古墳時代中期から後期(約1600年〜1500年前)にかけて行われたお祭りや儀式の場において使用されました。
 なお、これらの石製品は、前回の臼玉と同様、滑石という非常に柔らかい石で作られています。

紡錘車
(滑石製模造品)有孔円板
(滑石製模造品)剣形石製品
 

移動式カマド
左・の写真は移動式カマドの破片です。大形品であるため上私部遺跡からは破片しか見つかりませんでした。
 その使用法は模式図のように、上部にあけられた穴の部分に甕を載せ、カマドの中で火を焚き、煮炊きをしたり、底に穴のあけられた甑と呼ばれる土器と組み合わせて下から蒸気を上げ、米などの食材を蒸して調理したりするために使用されました。
 なお、最近行われた上私部遺跡の調査では、今回は展示していませんが、作り付け(固定式)カマドの焚き口に取り付けられた「U字型土製品」と呼ばれる製品の小さな破片も見つかりました。

 これらの遺物は、朝鮮半島南部の遺跡からみつかるものと非常によく似ており、7月号広報で紹介した小形平底鉢とともに当時の交流関係を示す証拠としてその持つ意味は非常に大きいと言えます。

 

 

 

 

 

 

はそう
 大きく口が広がり、体部の中央に丸い穴があけられた土器は「はそう」と呼ばれる須恵器で、5世紀から7世紀にかけて形を変えながらも盛んに作られました。
 他の遺跡では竹管状の植物が差し込まれた状態でみつかったり、東海地方ではくちばし状に形作られたものもあることから、ここから液体を注いでいたと考えられます。
 
 次回は私部南遺跡の発掘調査の成果を紹介します。

移動式カマドの破片

移動式カマド模式図

はそう

 

市文化財シンポジウム「ヤマト政権の生産基盤を掘る」

 このシンポジウムでは、第二京阪道路用地内及び周辺遺跡を取り上げ、古墳時代における生産活動についての報告と生産活動に従事していた人々やそれらを掌握していたであろう諸豪族、さらにはヤマト政権との関わりについてお話しします。
 みなさんも一緒に古墳時代の交野地域について考えましょう。
と き 10月24日(土)午前10時〜午後4時50分(午前9時15分開場)
ところ ゆうゆうセンター4階 交流ホール
内 容
 第1部 基調報告・ 午前10時〜11時40分
 ▽若林幸子(R大阪府文化財センター)「開発拠点としての集落ー上私部・有池遺跡の発掘調査からー」
 ▽三好孝一(R大阪府文化財センター)「交野市域開拓の先駆者たちー私部南遺跡の発掘調査からー」
 ▽南孝雄(R京都市埋蔵文化財研究所)「北河内の初期須恵器生産ー上の山・茄子作遺跡の発掘調査からー」
 昼食 午前11時40分〜午後0時40分
 基調報告・ 午後0時40分〜1時40分
  ▽大竹弘之(枚方市教育委員会)「茄子作遺跡は渡来人の集落か」
  ▽真鍋成史(交野市教育委員会)「倭鍛冶の系譜ー森遺跡の発掘調査からー」
 第2部 記念講演 午後1時50分〜3時10分
 ▽和田晴吾(立命館大学教授)「北河内の古墳と地域社会」
 ▽水野正好(R大阪府文化財センター理事長)「ヤマト政権を支えた産業とその人々」
 第3部 討論会 午後3時30分〜4時45分
 ※テーマ・内容・タイムスケジュールなどが変更になる場合があります。
定 員 500人
参加費 無料
申し込み・問い合わせ 9月1日(火)から文化財事業団(TEL893・8111 FAX893・8168 e-mail:bunkazai@city.katano.osaka.jp

大阪ミュージアム構想

 大阪府と府内の市町村は、大阪のまち全体を「ミュージアム」(美術館や博物館)として、各地の魅力的な地域資源を「展示品」や「館内催し」に見立て、大阪の魅力アップを図る「大阪ミュージアム」構想を推進しています。
 交野市では、「教育文化会館」以外にも「私部代官屋敷周辺のまちなみ」「交野山と信仰の道」「交野が原と七夕まつり」など16件が、現在登録されています。
■大阪ミュージアムホームページ http://www.osaka-museum.jp/index.html

 

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