[ホームページ] へ戻る

広報 かたの 特集シリーズ


広報かたの 平成21年11月1日号
発掘!発見!緑立つ道

今月のテーマ 「私部南遺跡調査2と平池遺跡 」

(財)大阪府文化財センター 佐伯博光
問い合わせ (財)大阪府文化財センター京阪調査事務所 (TEL895・1200 〒576−0022 交野市藤が尾1−2)
 
今回は、前回に引き続き私部南遺跡の調査成果と、東倉治遺跡・倉治遺跡から始まった第二京阪道路用地内で見つかった遺跡の最後となる、平池遺跡を紹介します。
 
私部南遺跡

私部南遺跡の、奈良時代から後の時代の様子について紹介します。

奈良時代
京阪電鉄交野線のすぐ東側で古墳時代・飛鳥時代の集落に重なるように、奈良時代の建物跡が見つかっています。
 建物の構造は、飛鳥時代と同様の掘立柱建物と呼ばれるものですが、飛鳥時代と異なるのは、建物の向きがほぼ東西南北方向を示すことです。建物の向きとは建物の主軸、つまり棟の通りが東西南北に向くことです。
 左上の奈良時代の建物跡の写真を見ると、建物の柱が立っていた穴の縁を白い線でなぞっています。その白い輪っかの列を、写真の左上の方位と比べてみると、白い輪っかが東西南北に並んでいるのが分かると思います。
 これは奈良時代になると水田の区画に現れるように、条里地割りという土地の区画利用が定められ、これによって建物の方向も規制されるためです。
 また、建物跡の周辺からは、円面硯と呼ばれる硯が2点見つかっています。
 右下の写真は柱穴の中から見つかった硯で、直径約16・と奈良時代の硯としては大きいものです。脚の部分は、失われています。左側の写真の硯は、墨をする陸部が高く盛り上がっているのが特徴です。
 また猿面硯と呼ばれる現在の硯の原型になる硯も見つかっています。
 このほかに、腰帯具という官人が腰に巻くベルトのようなもの(右下の図)の一部である、巡方という金属製の部品も出土しています。
 このことから、文字を使う官人が住んでいた可能性が考えられます。

奈良時代建物跡

 

円面硯(写真上と右)

巡方

使用例

平安〜鎌倉時代
 平安時代になっても前述の部分には、数棟の建物跡がまとまって見つかっており、途絶えずに人が生活を営んでいたことがわかりました。
 しかし、この部分以外では大きなまとまりは見られなくなり、数棟の建物跡が当時の地形の高い部分で見つかっています。
 低い部分では、鎌倉時代ころになると畦や小規模な水路を伴った水田跡が見つかっています。現在の地面から約5メートル下からも水田跡が見つかっており、低い部分でも水田を造るための開発が及んでいたことがうかがえます。
 
室町時代
室町時代と考えられる水田の耕作土からは、金属製の大工道具が2点見つかっています。1点は錐、もう1点は鑿と考えられます。鑿は身の部分が9・、折れ曲がった柄側の部分(写真右側)の長さは8・、断面形は四角で根元に行くにつれ丸くなっています。刃は先端のみに付けられています。錐は柄側の長さが2・5・、身が5・、断面形は四角です。
 これらの道具は、もしかしたら、当時の大工さんがうっかり落としたものかも知れません。さぞ困った事だったでしょう。

鑿(上)と錐(下)

近世以降
近世以降になると低い部分は、遺跡周辺の河川の氾濫によって運ばれた土砂によって徐々に埋まって行きます。
 右下の地層断面写真で近世の水田の真ん中辺りに、洪水によって運ばれた土砂の層があります。この土砂を耕して水田を営んでいた痕跡も見られました。やがて安定した、現在見られるような水田の景観が造られました。

私部南遺跡の地層断面写真

 
平池遺跡

この遺跡は、平成15年度に当センターが実施した、確認調査によって新たに発見された遺跡です。この調査結果を受け、16年から17年に本格的な発掘調査を実施しました。
 調査地周辺は現在、階段状に水田が造られていますが、大きく東から西へ張り出した小規模な尾根の名残が随所に見られます。
 確認調査では、平坦に形作られた水田の下には、埋没した谷が多く見つかっており、周辺のもともとの地形は細かな谷が入り組む、起伏の多い地形であったことが考えられます。
 調査では、谷や尾根など細かな地形をうまく利用した、主に古墳時代後期から中世にいたる時代の人々の生活の跡が見つかっています。

古墳時代の遺構

 

 特に古墳時代には、右の写真で右手から延びてきて手前へほぼ直角に曲がる幅約2・5メートル、深さ約0・4メートルの区画溝が見つかっています。溝の内側では明確な遺構は見つかっていませんが、横瓶や提瓶など特殊な形の土器が見つかっています。

 

大阪ミュージアム構想

 大阪府と府内の市町村は、大阪のまち全体を「ミュージアム」(美術館や博物館)として、各地の魅力的な地域資源を「展示品」や「館内催し」に見立て、大阪の魅力アップを図る「大阪ミュージアム」構想を推進しています。
 交野市では、「教育文化会館」以外にも「私部代官屋敷周辺のまちなみ」「交野山と信仰の道」「交野が原と七夕まつり」など16件が、現在登録されています。
■大阪ミュージアムホームページ http://www.osaka-museum.jp/index.html

 

TOPへ戻る