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広報 かたの 特集シリーズ

広報かたの 平成21年2月1日号

今月のテーマ:上の山の辻から東高野街道をたどる

ボランティア解説員 高尾秀司
 交野市の北西端、私部西地区は、真ん中に天野川が流れ、東西に分かれています。
 西側には小さな丘があり、その一帯は「上の山(うえんやま)」と呼ばれています。
 「上の山」には、南北に伸びる道が2本通っており、1本は現在の道路、もう1本は、平安時代から京都の東寺と和歌山県の高野山を結んできた東高野街道です。
 街道は、交野市郡津からいったん、枚方市の茄子作に抜け、再び「上の山」で交野市に入り、星田に至ります。
 「上の山」には、逢合橋から来た山根街道と合流する辻があります。ちょうど、ホームセンターの北側のあたりになりますが、今回は、この辻からスタートします。名

上の山の辻
 ここには、3基の石造物が建っており、それが辻の目印です。
 一つ目は大峰山供養塔。高さ190・、幅35・で、正面に「大峰山」、右下に「宇治」、左下に「京八幡」、その下に大きく「道」、塔の右に「すぐ高野大坂道 安政元年(1854年)三月建立 願主 私部村徳右衛門」と刻まれています。二つ目は明治37年1月に大阪府が建立した道標で、正面に「右山根街道」、左に「すぐ東高野街道」、その下に「津田山城道」と刻まれています。三つ目は地蔵菩薩立像で「地蔵尊 私部村地蔵講 享保十年(1725年)乙巳三月二十四日」と刻まれています。
 この辻は、今で言う交差点であり、昔は多くの人々が行き交っていたと考えられます。
 写真は、昭和40年代と現在の比較です。現在の写真では道路が舗装され、住宅が建ち、ずいぶん様子が変わっているのが分かります。
昭和50年代(左)と現在(右)の「上の山の辻」。真ん中に3基の石造物が建っていますが、周囲の様子はずいぶん変化しています。
閲武駐蹕記念碑
辻の北西には、ひときわ目立つ立派な石碑があり、閲武駐蹕記念碑と彫られています。
 これは、大正3年11月16日、付近一帯で行われた陸軍の大演習へ、大正天皇が閲兵されたことを記念して建てられたものです。
 同年8月には、第一次世界大戦が勃発しており、この演習も戦争と関係があったのだと思います。
 
本尊掛松
 辻から東高野街道を西に進むと石垣の中に大きな地蔵がまつられています。光背の左に「法明上人御旧跡勧進沙門」、その裏に「弘化二乙巳年四月二十四日世話人交野門中」と彫られています。
 元享元年(1321年)12月15日の夜、高野聖として活躍していた摂津深江の法明上人に「石清水八幡宮に納めてある融通念仏宗の霊宝を授かり、法灯をつぐように(後継者になるように)」との夢告げがありました。
 当時、融通念仏宗は良い後継者に恵まれず、100年以上、表舞台から消えていました。上人はさっそく弟子12人を連れて男山へ向かい、「上の山」まで来ると、同じように夢告げを受け、霊宝を深江に届けようとする八幡宮からの社人の一行と出会いました。
 両者は、喜んで霊宝を授受し、そばにあった松に霊宝の十一尊天得如来の画像を掛け、鐘をたたきながら松の周囲を喜んで踊って回ったと言われています。これが、同宗の念仏踊りの始まりとされています。
 この松は「本尊掛松」と呼ばれ、大切に守られてきましたが、明治30年代に枯死してしまったようです。現在は新しい松が植えられています。
※本尊掛松の所在地は枚方市茄子作南町です。
新しい松が植えられている本尊掛松
 
上の山遺跡
辻に戻り、再び街道を南へ進むと突如、巨大な構造物が目に入ります。工事中の第二京阪道路の高架橋です。大規模な工事で、周囲の景観は昔と全く変わりつつあります。道路建設に先立ち行われた調査で、街道の両側に遺跡が広がっていることが分かりました。これが上の山遺跡です。
 遺跡からは、弥生時代中期前半(約2200年前)に建てられた神殿ではないかとみられる建物が見つかり、新聞でも取り上げられました。ほかにも、旧石器時代から中世までの遺物が発見されました。
 
鎌田水論一件日記
南下を続けると、私部西から星田北へ地名が変わります。江戸時代もこの近辺は、私部村字鎌田と星田村字北出と言って、両村の境になっていました。しかし、間を流れる星田中川に築く樋をめぐって、寛政8年(1796年)に大きな争論が起こりました。
 両村ともに1500石を超える大村だったため、争論は周辺の他の村まで巻き込み、大坂町奉行所へと持ち込まれました。「鎌田水論一件日記」は、この争論について私部村がまとめた史料で、最終的には、両村がよく話し合い、解決策を見つけて一件落着となりました。
 
 上の山は近年、住宅開発などが進み、様子は大きく変化してきました。
 また、第二京阪道路の工事で高架橋ができ、さらに様子が変わっています。
 近くを訪ねる機会があれば、この記事を思い出していただければと思います。

古文書読解講座

 今回取り上げた「鎌田水論一件」を読み解く連続講座(3回)を開きます。
と き 2月12日(木)・19日(木)・26日(木)午前10時〜正午
ところ 青年の家206号室
講 師 文化財事業団職員
参加費 1,500円(資料代含む)
申し込み・問い合わせ 文化財事業団(TEL893・8111 土曜・日曜日は休み)

 

シリーズで学ぶ交野の歴史第9回講演会

交野の歴史を学ぶ連続10回の講座です。「交野市を中心とした朝鮮半島からの渡来系文化」と題した講演を行います。
と き 2月27日(金)午前10時〜正午
ところ 倉治図書館2階 視聴覚室
講 師 橿原考古学研究所 井上主税さん
定 員 30人
費 用 300円(資料代)
申し込み・問い合わせ 歴史民俗資料展示室(TEL810・6667月曜・火曜日は休室)

 

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