「神宮寺・石仏の道」
ボランティア解説員 高尾秀司

  交野の有名なハイキングコースの一つに「石仏の道」という道があります。この道はその名の通り、道沿いに多数の石仏さんがおられます。
 今回はこの「石仏の道」を紹介します。

神宮寺の石仏さん

 石仏の道の出発点でもある神宮寺は、交野でも古い町並みを残す集落の一つです。
 神宮寺は岩倉開元寺という山寺の登り口にあたり、当時も現在と同じように栄えていたことが発掘調査から分かっています。お寺へ登る参拝者のための茶屋などもあったのではないでしょうか。
 集落の周囲や入り口には阿弥陀如来を彫った石仏さんが点在しています。集落の南と北側の入り口にも、それぞれ2体の阿弥陀如来さんが仲良く並んでおり、私たちを出迎えてくれます。
 阿弥陀如来さんは、おすがりすれば、すべての人々を救ってくださるという仏さまです。これらの石仏さんは、村への悪霊の侵入を防ぐための「塞の神」としての役割もあわせ持っていたのかもしれません。
第一の石仏さん

神宮寺から石仏の道を登って開元寺跡の石碑や縄文時代住居跡の石碑を過ぎて、山手にさしかかる所に、弥勒仏坐像(市指定文化財)がおられます。
 この石仏さんは石仏の道の「第一の石仏」とも呼ばれています。やや稚拙さが感じられるものの、おおらかでゆったりとした表情をしています。
 造られたのは鎌倉時代の始めごろとされ、山頂近くにあった岩倉開元寺の境界を示す傍示石と考えられています。

第二の石仏さん
第一の石仏さんから、さらに登ると、「文明十一年(1479年)」の銘が入った第二の石仏さん、三尊磨崖石仏(市指定文化財)が、石仏の道に背を向けた形で立っています。
 高さ3・4・、幅3・7・の巨石に阿弥陀三尊を半肉彫りし、枠の外側の脇には阿弥陀如来の種字「キリーク」が刻まれています。真ん中に阿弥陀如来、向かって右に勢至菩薩、左に観音菩薩を従えていると見られますが、摩耗がひどく、人によっては両脇を比丘形(托鉢する修行者や出家得度して修行した人)と見る意見もあります。
阿弥陀如来立像
 第二の石仏さんのすぐ北側に、阿弥陀如来立像石仏(市指定文化財)があります。この石仏さんの後ろの斜面は「鳩が谷」と呼ばれ、以前にここから骨壺が出土したと伝えられており、岩倉開元寺の墓地であった可能性もあります。
 「鳩が谷」という名前も「墓の谷」がなまったものではないでしょうか。
第三の石仏さん

 山道をさらに登り、標高160・ほどのところに岩倉開元寺の寺域への登り口があります。この登り口の手前に第三の石仏さん、阿弥陀三尊磨崖石仏(市指定文化財)があります。
 高さ2・5・、幅2・1・の巨石に彫られており、真ん中に阿弥陀如来坐像、向かって右に勢至菩薩立像、左に観音菩薩立像が彫られています。
 この石仏さんは西に面していることから、西方極楽浄土への往生を願ってつくられたのでしょう。

 
大寺院「岩倉開元寺
 第三の石仏さんを抜けると、石仏の道は険しい山道になります。足に自信のない人はここで引き返したほうがいいでしょう。今回開催する「石仏さんツアー」もここで終了しますが、健脚の人のために、ここから先も少し紹介しましょう。
 石仏の道をさらに登ると「馬かけ場」と呼ばれる平坦地、「仁王門跡」や「ゲホウ岩」と呼ばれる岩群があります。ゲホウ岩の横から山頂へと石仏の道は続きます。
 中腹から山頂にかけて、道沿いには平坦な箇所があちこちにあります。これは岩倉開元寺に28もあったと伝えられる堂塔の跡と思われます。馬かけ場やゲホウ岩周辺からは、瓦が採取され、そのことを裏付けています。
 今月は「第2回石仏さんツアー」を行います。石仏の道にはたくさんの石仏さんがあり、ツアーにはうってつけの道だと思います。まだまだ暑い中ですが、一緒に登ってみませんか。
 みなさんの参加をお待ちしています。
第2回石仏さんツアー〜石仏の道〜


 今回紹介した石仏たちを訪ね、「ふるさと交野」を歩いてみませんか。
と き 9月26日(水)〈雨天中止〉
集 合 午前9時30分に、いきいきランド交野 正面玄関
定 員 先着30人
参加費 300円(資料代、保険代)
申し込み・問い合わせ 9月3日(月)から文化財事業団(TEL893・8111)