「郡津の石仏さん」

ボランティア解説員 中光司
 春めいてくる3月、のんびりと郡津の里を歩いてみてはいかがでしょうか。今月は、郡津駅から丸山古墳方面に進み、東高野街道や明遍寺周辺の道すがらにたたずむ石仏さんを紹介します。
「郡門」と入ったお地蔵さん
 郡津駅から北東へ進むと、「危険」と注意書きがはられた大きな石灯篭が立っています。文政13年(1830年)に造られた常夜灯です。
 石灯篭の角を曲がり、東に進むと極楽寺があります。その本堂の前と竹やぶの前には墓石が並び、中ほどに「郡門」と文字が入ったお地蔵さんが立っておられます。郡門とは、昔の郡津のことです。
 右手に錫杖、左手に宝珠を持ち、今にもこちらに歩き出しそうな雰囲気があるお地蔵さんです。。
 ほかにも、枚方市との境にある郡津共同墓地の一番奥には、「南無妙法蓮華経・瑞塔寺」と刻まれた大きな石柱があります。
 この石柱にも右面に「河州交野郡郡門村」、左面に「享保八(1723)癸卯九月十八日」とあり、このころに「郡津」は「郡門」と書かれていたことを示しています。

極楽寺前のお地蔵さん
※右下に「郡門」の文字
辻のお地蔵さん
 極楽寺から、古い道をたどりながら南東へ進むと東高野街道と出会います。
 ここは四辻になっていて、その北東に赤い頭巾と赤い服を着たお地蔵さんが立っておられます。
 このお地蔵さん、実は頭部が失われていて、代わり顔が描かれた丸い石が置かれています。
 そんなお地蔵さんも、近所の方に愛され、いつも新しい花と供物が供えられています。最近まで八月の地蔵盆にあわせて地蔵祭りがささやかに行われていました。

辻のお地蔵さん
明遍寺と九重層塔

九重層塔
 辻のお地蔵さんから東へ200メートルほど行くと明遍寺があります。門を入ると正面に地蔵堂、その後ろに九重層塔が見えます。この塔は、上部と下部で石質・形態が違っており、少なくとも3つの塔を寄せ集めたようです。
 また、頂部は五輪塔の水輪が乗せられていて、一番下の四角い石の四面にそれぞれ、弥勒菩薩・阿弥陀如来・釈迦如来・薬師如来が彫られています。どの像も30センチくらいの大きさで、風化が進み、顔の表情や手と組まれた足の様子がかろうじてわかる程度です。
 もともとこの塔は、長宝寺(現、郡津神社境内)にありましたが、廃寺となったため明遍寺に移されました。
 この塔は南北朝から室町前期に造られたもので、他にも二尊仏やお地蔵さん・阿弥陀さんなど数多く並べられていますが、いずれも相当に古そうに見えます。中には唐臼の軸受けに利用されていたのか、頭部にへこみをもったお地蔵さんもあります。
鎌倉地蔵さん
明遍寺境内の墓地の中ほどに鎌倉地蔵と呼ばれている石仏さんがいます。
 風化が激しく顔の表情や衣の状態は分かりませんが、組んだ足の上に両手を置き、両親指の先を接し、人差し指を立てる阿弥陀如来の印相を結んでおられる状態はわかります。
 このお地蔵さんは、鎌倉時代のものとされていますが、腰部より下が省略されていることから、室町前期から中期に造られたと思われます。


鎌倉地蔵さん

 お寺や野の石仏さんはそれぞれの時代に人々の何らかの思いをもって彫られ、立てられました。
 そして、その後の人々のいろんな生きざまを見て、苦しみ、悲しみ、悩みを慈悲深く受け入れてこられました。
 そういった思いで石仏さんと向き合うとき、私たちは安らぎを覚えるのだと思います。
 今回で昨年の4月から行ってきました「里の石仏さん」を終えることとします。
 ご愛読どうもありがごうございました。
八葉蓮華寺一般公開日変更
 これまで毎月第3日曜日に行っていた八葉蓮華寺の重要文化財・阿弥陀如来立像の一般公開日が4月から変更になります。
公開日 5月18日(日)、11月16日(日)現地に午前11時集合(要申し込み)
保存協力金 300円
※20人以上の団体の場合は、公開日以外でも随時受け付けます。
※文化財担当者による説明があります。
主な交野市文化財の公開日
■重要文化財(要申し込み)
▽山添家住宅=5月10日(土)・13日(火)午前10時〜
▽北田家住宅=11月18日(火)・23日(祝)午前11時30分〜
■市指定文化財(要申し込み)
 5月10日(土)・13日(火)
 11月18日(火)・23日(祝)
▽廃千手寺収蔵庫(聖観音立像・如意輪 観音坐像=河内森駅に午後1時集合
▽薬師寺(千体仏・薬師如来立像)、星田寺 (十一面観音立像)=星田会館に午後3時集合
参加費 無料
※文化財担当者による説明があります。
申し込み・問い合わせ 文化財事業団(TEL893・8111)

最後までご覧いただきましてありがとうございました!