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平成26年11月定例勉強会

『万葉集』に親しむ
『万葉集』と万葉歌碑

  講師:岡本 三千代氏 (万葉うたがたり会主宰)

青年の家・学びの館 午前10時~12時
 33名の参加
 2014.11.29(土)午前10時、当日は早朝からの降雨にも拘らず、定例勉強会に33名(会員27名)が参加されました。
 高尾企画事業部長の司会で始まり、立花会長の挨拶に続いて、岡本三千代氏より「万葉集に親しむ」~万葉集と万葉歌碑~」について、万葉集へのこだわり、万葉うたがたり会のこと、交野と万葉集・歌碑など、大変わかりやすく作曲された歌を交えながら明快にご講演いただきました。


最初に紹介いただいた歌  <犬養節で>
  志貴皇子 (しきの みこ) 巻八・一四一八
石走(いわばし)る  垂水(たるみ)の上の  さわらびの 萌(も)え出(い)づる春に なりにけるかも
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岩をたたき 、しぶきを散らす滝のほとりの わらびが 芽を出し始める春に なったんだ

春の到来を告げる自然を読んだ素晴らしい歌です。早春の日光を受けた飛沫が、滝の上の岩がごつごつしたところを飛び散っています。 そして、岩の間(「石」は「岩」の意)から「ワラビ」が芽をだしてきました。蕨には、キラキラ光る水しぶきがかかっています。こんな自然の情景を詠んだものです。

万葉集とは
 7世紀後半から8世紀後半ころにかけて編まれた日本に現存する最古の和歌集。
n 巻1~巻20まで、およそ4520首(写本によって異なるので)の歌が載ってる。
n 天皇、皇族だけでなく、庶民の歌も数多く載せられている。
n すべて漢字(万葉仮名)で書かれている。
n 最初は数巻がまとめられ、のちに追加され、最終的に大伴家持が20巻にまとめたと
  考えられている。
n 「万葉集」は、「万(よろず)の言(こと)の葉の歌集」からその名がつけられたとも、
  「万代(よろずよ)に伝えられるべき歌集」からとも言われている。
   
 数ある万葉集のうち当日は、レジュメの通り、
  1.サンバ・DE・ツバキ   巨勢山のつらつら椿
  2.時雨彩色   春日野の時雨と黄葉、三笠山など
  3.KOMOYO  巻1の1 雄略天皇の御製など、
    それぞれの歌について詳しく解説いただき、併せて、岡本先生が作曲された歌を
    お聞かせいただきました。
 
 講演会後半では、秋色・紅葉の季節に合せて、全員で「紅葉」を合唱し、
 最後に、交野に関連する万葉歌碑について、詳しくご紹介いただきました。
 参加者から 「万葉集のこと大変わかりやすくお話しいただき、思いがけずに、私の好きな「犬養節」を久しぶりにお聞きすることが出来て、本当に良かったです!」と嬉しそうに感想を話されました。
 ※ 当日頂いたレジメ集の掲載にあたり、岡本先生の快諾を戴き御礼申し上げます。
  また、WEB検索により、数々のHPを参照させていただきましたこと、記して感謝申し上げます。
 

  今回の勉強会の報告は、出来る限り当日の雰囲気をお伝えすべく、動画を多用しました。
 
高尾部長より、講師の岡本三千代氏の紹介
 
立花会長からは、開会の挨拶と、
12月20日の「市民対象の注連縄づくり」の応援・参加の呼びかけがなされました。
 

講師 : 岡本 三千代氏

岡本三千代氏の万葉うたがたりのホームページ

以下は、HPを参照させていただきました。
 甲南女子大学文学部国文学科卒業。在学中に文化功労者である故犬養孝氏に師事、万葉集を学ぶ。現在、奈良女子大学大学院で、再び女子大生に!
「万葉の道」の著者、扇野聖史氏の出会いがきっかけとなり万葉集に作曲。「万葉うたがたり」という独自のスタイルで昭和57年より演奏活動を開始、今日に至り、2009年で活動28年を終えた。
CDや楽譜など作品集も制作。また講座・執筆など活動範囲も広がり、自治体と協力して、ふるさと作りの手伝いや、万葉ロマンの世界を広める活動をしている。前明日香村観光開発公社理事。


平成26年10月1日付で、犬養万葉記念館の館長に就任された。
 岡本三千代の「万葉うたがたり」とは

万葉集の長・短歌に自作のメロディーをのせて「歌い」、万葉集の歌の説明や、また岡本三千代個人の感性で万葉集によせて「語る」スタイルをいつのまにか「万葉うたがたり」と名づけていただいていた。
歌がメロディーを伴うことで、万葉歌がドラマテイックにイメージ化されてくる。 コンサート活動等を通して、古典学習としての「古代文学」ではない『万葉集』の魅力の数々を伝えていき、ひとりでも多くの万葉ファンを増やしていきたいと頑張っている。
 犬養孝先生との出会い そしてライフワークに

甲南女子大学で万葉学者の故犬養孝氏に出会い、師事したことが、今日のきっかけとなっている。

犬養先生は風土文芸学の立場から万葉集を生涯の研究対象とされた。ゼミ生の私たちは先生と一緒に日本全国の万葉故地を訪れ、時代や情景を万葉時代に戻し、臨場感を味わう体験を通して、万葉歌を勉強し、考証した。その時には必ず、「犬養節」という犬養先生独自の節回しの朗唱に聞き入りながら、または唱和しながら、万葉旅行を楽しむのが「あたりまえ」になっていた。

犬養先生の大阪大学時代の教え子で、銀行マンでありながら並行して万葉集研究をライフワークとされておられた故扇野聖史氏のお奨めで(扇野さんは既にウクレレで万葉歌を歌われていた!?)、万葉歌に作曲をしたことが、最初のきっかけとなった。大学4年の処女作が「二上エレジー」である。
万葉集を覚えようという気持ちで、手探りで作曲を始めたが、犬養先生の朗唱→扇野さんから受けたカルチャーショック→作曲→演奏活動という発展は思いがけないことでもあったし、その後は見えない力・人によって支えられて「私と万葉集」についてライフワークだと公言できるまでに至ったことを感慨深く思っている。2015年には活動35週年を迎える。
 活動形態

コンサート活動

岡本三千代と万葉うたがたり会という演奏集団を結成。
キーボードを中心として、アコースティックな楽器なども伴い、歌う演奏を主体としている。
又、弾き語りから、企画や条件などにあわせながら、いろんな形で演奏活動を行っている。

講座について

私の作曲した万葉歌を聞いて頂きながら、講義をすすめている。
犬養節を朗唱して、万葉集を机上の学問とせず、必ず、声に出して歌っていただくことも
特徴の一つである。
心の躍動感「歌は心の音楽」であることの実感を共感していただきたい

・万葉うたがたりゼミナール「毎月第1水曜日」(音楽サロンTSUBAICHIにて)
・宝塚コープカルチャー「毎月第2金曜日」
・猪名川万葉の会「毎月第2水曜日」
・明日香村万葉朗唱の会「毎月第4木曜日」
・備前歌がたりの会「年3回」

執筆活動
・個人情報誌「昼下がり通信」を発行 その他
 
講演会当日の風景
  
当日は、岡本先生から万葉集の詳しい解説を聞いたり、
作曲された歌を聴いたり、全員で歌を歌ったり楽しい時間でした。

万葉集に親しむ 万葉集と万葉歌碑 
レジュメ
 
 
 
逢合橋の七夕万葉歌碑
彦星と 織女と 今夜逢はむ 天の川門に 波立つなゆめ

 
天野川緑地万葉歌碑
 
 

 万葉うたがたり会のテーマ曲
 サンバ・DE・ツバキ

 こちらをクリックして、 サンバ・DE・ツバキの曲を試聴下さい。
 巨勢山の つらつら椿 つらつらに 見つつ偲はな 巨勢の春野

河上の つらつら椿 つらつらに 見れども飽きず 巨勢の春野は
 巨勢山(こせやま)のつらつら椿つらつらに見つつ思(しの)はな巨勢の春野を

巻一(五十四)
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巨勢山のつらつら椿を、その名のようにつらつら見ては賛美したいものだなあ。巨勢の春の野を。
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この歌は坂門人足(さかとのひとたり)の作で、大宝元年(701年)の秋、持統天皇が文武天皇とともに紀伊国の「紀の牟婁(むろ)の湯」(白浜温泉)に行幸したとき、同行した坂門人足が詠んだ歌です。
一見、単純に秋に訪れた巨勢山で、春に咲く椿を見てみたいものだと言っているようにも取れますが、この歌も土地誉めの要素が強く巨勢山を賛美することで土地の精霊の加護を受けて旅路の無事を祈る歌なのでしょう。

その証拠に、巻一の(五十六)にはこの歌の元となったといわれている「河の辺(へ)のつらつら椿つらつらに見れども飽かず巨勢の春野は」という歌が収録されています。
この手の土地誉めの歌はお呪いの呪文のようなもので、伝承となってさまざまな人が詠み替え詠いついで来たようですね。

また、この歌の特色のひとつとして、歌の「調べ(リズム)」の滑らかさは特筆すべきものがあるように思います。
「巨勢山の…巨勢の春野を」、「つらつら椿つらつらに」など繰り返しの技法を使うことで、歌を口ずさんだ時に非常に心地よくすらすらと暗じられるようになっています。

人々に詠み継がれ歴史のなかに残る名歌には、このような「調べ(リズム)」感のよいものが多いものです。

 時雨彩色
 YouTubeで万葉うたがたりコンサートの「時雨彩色」を動画(3分)でご覧ください。 
 高円の 野辺の秋萩 この頃の 暁露に 咲きにけむかも

春日野に 時雨降る見ゆ 明日よりは 黄葉挿頭さむ 高円の山

時雨の雨 間無くし降れば 三笠山 木末あまねく 色づきにけり

大君の 三笠の山の 黄葉は 今日の時雨に 散りか過ぎなむ
 
 岡本先生に解説いただきました、三笠山の参考写真です。 

  

手前は荒池、向こうは奈良公園、三角形の山が三笠山(御蓋山)(みかさやま)である。
背後は春日奥山(春日原始林)。御蓋山の全容が真近に眺められる。

 KOMOYO
天皇の御製歌(おほみうた)

籠(こ)もよ み籠(こ)持ち 掘串(ふくし)もよ み掘串(ぶくし)持ち この丘に 菜摘(なつ)ます児(こ) 家聞かな 名告(なの)らさね そらみつ 大和(やまと)の国は おしなべて われこそ居(お)れ しきなべて われこそ座(ま)せ われこそは 告(の)らめ 家をも名をも

巻一(一)
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籠(かご)よ 美しい籠を持ち 箆(ヘラ)よ 美しい箆を手に持ち この丘で菜を摘む乙女よ 君はどこの家の娘なの? 名はなんと言うの? この、そらみつ大和の国は、すべて僕が治めているんだよ 僕こそ名乗ろう 家柄も名も
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万葉集の巻頭を飾る雄略天皇の御製歌です。
ぶっちゃけた話、天皇が野原で菜を摘む女の子をナンパしている歌ですね(大笑)

籠や箆などの持ち物を褒めているのは、いまでいう「かわいい服だね」とかいった感じです。
そして最後に自分自身を自慢するというところもなんだか現代人に通じる心がありますね。

まあ、実際には大和国原があまねく天皇の統治する平和な国であれとの願いを込めた歌でもあり雄略天皇自身の作かどうかも微妙なところなのですが、こういう歌を巻頭の一番最初に持ってくる辺りが万葉集のおおらかで自由な気風をよく表しているように思います。
 
 質問にお答えになった、雄略天皇のエピソード 「王を待ち続けた女性」  『古事記』下つ巻 「赤猪子」より

ときに残忍ともいえる政治を行ったと伝わる大長谷若建命(おおはつせわかたけのみこと・雄略天皇)ですが、『古事記』では、“英雄色を好む”の言葉にふさわしい恋愛の物語が多く取り上げられています。
そのヒロインの一人が、天皇が美和河(みわがわ)のほとりで出会った美しい乙女です。

川で衣を洗う姿に、天皇は思わず「お前は誰の娘か」と問いかけ、美和河の乙女は、「私は引田部赤猪子(ひけたべのあかいこ)と申します」とお答えしました。

この時代、男性が女性に名前を聞くということは、「結婚してください」とプロポーズしているのと同じ、女性が名前を教えるのが、イエスの返事と同じでした。

そこで、天皇は、「お前は嫁かずにいるように。すぐ呼びにこよう」との言葉を乙女に伝え、宮へと戻っていきました。
天皇から召される日を今か今かと待ち続ける赤猪子(あかいこ)。でも、どうしたことでしょう、なかなか迎えはやってきません。そして、とうとう八十年もの月日が流れてしまったのです。

すでに天皇にお仕えすることは叶わないとは知りつつ、赤猪子(あかいこ)は、天皇の宮へうかがうことを決意します。長年ひたすら待ち続けた自分の心だけはお伝えしたいと、勇気を出して、用意していた数々の引出物ももって。

ようやくお目通りできた天皇は、赤猪子(あかいこ)のことなどすっかり忘れてしまっていました。でも、「私の操だけはお伝えしたかったのです」と訴える赤猪子(あかいこ)の真心は、天皇の心に響き、約束通り結婚したいともお考えになりましたが、お互いの年齢を考えればそうもいきません。歌を交わし、そして、数々の贈り物をお与えになりました。

長い年月が過ぎ行く間、美しい赤猪子(あかいこ)に思いを寄せる男性はきっと何人も現れたことでしょう。それらをすべて振り切り、たった一度の約束を胸に待ち続ける――。人を本当に好きになるというのは、こういうことなのかもしれません。

    (なら記紀・万葉を参照)

♪  紅葉 歌詞
 秋の夕日に 照る山もみじ 濃いも薄いも数ある中に
松をいろどる 楓(かえで)や蔦(つた)は 山のふもとの裾模樣(すそもよう)

溪(たに)の流に 散り浮くもみじ 波にゆられて はなれて寄って
赤や黄色の 色さまざまに 水の上にも織る錦(にしき)
 岡本先生のリードで、「紅葉」を合唱しました。動画(1分50秒)でご覧ください!
 逢合橋の七夕歌碑
 
 彦星と 織女と 今夜逢はむ 天の川門に 波立つなゆめ
 昨年の7月7日の万葉歌碑めぐりで、岡本先生がお話になった様子を動画(5分)でご覧ください!
 
 交野市市政40周年記念事業
天の川七夕万葉歌碑除幕式の模様をご覧ください!
 
天の川 梶の音聞こゆ 彦星と織女と 今夕逢ふらしも
次回の新年恒例の初歩きは、平成27年1月2日(金)10時~12時の予定です。
午前10時、京阪バス・妙見口バス停集合。星田妙見宮・星田神社の初詣。
案内は立花会長、妙見宮で平研さんより「妙見宮の神々と祈り」のお話がございます。
是非とも、多くの皆様ご参加ください! お待ちしております!


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