黒姫山には、昔、信州中野の城主の高梨氏に黒姫という美しい姫がいて、
その姫を懸想したこの山の大蛇との悲恋の結果、山の頂きにある沼に姫は身を投げたという伝説が言い伝えられている。信州富士と呼ばれ、典型的なコニーデ型火山の黒姫山は、東になだらかな裾野を広げた女性的な山である。
登山道は、種池バス停から古池を経て新道を登る西登山道と表登山道、小泉山道の三つがある。
8月の末、西登山道から黒姫頂上を目指した。
種池バス停近くの空地に車を駐車、朝8時過ぎ出発。
種池を越え、古池を左に巻いて樹林帯にでる。沢をいくつか越えて、
きつい登りに息が弾み、足が進まない。気を取り直しながら、上へ上へと進むが、なかなか展望が開けない。
身体はきついが、周りの樹木の息遣いがわかるような静けさは、下界では味わえない。
ブナの大木の登山道は気持ちがいい。見上げる空はブナの枝で遮られて見えないが、
わずかに太陽が射し込み全体に明るい。一息入れて、登りにかける。
次第に、樹木も低くなり、稜線に出る。
展望が開けてきて、戸隠連峰から連なる霧のかかった高妻山が見える。
右側には、飯綱山。
笹の稜線は気持ちがいい。汗ばんだ身体に風が爽やかだ。
足が自然に出る。最後は岩がごろごろした道を一気に登った。頂上には、先客が5人。時計を見ると11時30分だった。
「ついに登ったぞ!!」と叫びたかった。360度の展望が素晴らしい。
目の下には、太陽に輝く野尻湖が。周囲の山々が眩しい。毎年夏には一度は黒姫に登るという東京のサラリーマンは、
「昨日夜行列車でたち、今朝黒姫駅から表山道を登って来た。」と眠そうに言っていたのを、思い出す。
またこの日は、東京マラソンが行われ、夏に強い谷口選手が優勝した日でもあった。
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